2月9日〜


渡部陽一イラク日記2月9〜17日
今回はタイと日本での出来事です
2月9日   
タイ、プーケット取材に出発。2度目のプーケット取材である。女性紙のグラビアでのホテル、スパ特集である。このスパというものを私は知らなかった。マッサージとエステとアロマテラピーがドッキングしたものであるがものすごく気持ちよさそうである。値もそれなりに張るのであるが女性としてはこれほどの至福の時間もそうはないといえるほど健康的なオプションである。撮影していて自分も試してみたいと何度感じたことか。スパが世界的なブームを迎えていることにも納得である。



2月10日 
プケットで高級ホテルとスパ取材を続ける。中判カメラを使い照明を立てての大掛かりな撮影だ。スピードを競うイラク取材とは正反対の取材スタンスである。タイはとにかく暑い。湿気もすごい。南国リゾートここに健在である。汗だくで機材を運び撮影をし次の取材ポイントへと映っていく。タイ取材ですばらしいことはタイフードを楽しむことができること、これは重要だ。毎日スパイシーな料理を口にできるのはタイ取材でしかありえない快楽である。



2月11日 
タイ取材のコーディネーターの男性は日本語が達者である。日本に1年少々いただけであるという。この短期間の間にいかに日本語をマスターしたのかいつも質問していた。彼が言うには、日本人の友達をつくって仕事が終わった後は毎日遊びにいっていたという。そこではじめて聴く言葉や使い回しがあったとき即質問してメモを取るという。マメさが語学勉強に有効だよといわれて納得した。なかなかできないことだ。日本語が話せるおかげで仕事はひっきりなしにくるという。努力は実るものなのだと感じ入った。



2月12日 
タイの食事は本当においしい。特に海産物を使った激辛料理が最高だ。えびをから揚げにしたものを得体の知れない野菜やナッツとからめてスウィートチリソースをまぶしての料理は忘れられない。イラクの食事もおいしいが決まったものしかない。しかしタイはバリエーションがありすぎて計り知れない。毎日えびや蟹を食べることなど一生のうちでそうない事件である。タイに観光客が殺到するのもわかる気がした。この地に住みこんでしまったら二度とイラク取材に行く気がしないであろう。



2月13日 
宿泊しているホテルはJ.W・マリオット、日本人の旅行者もたくさん宿泊している。取材が終わるのが大体夜10時、その後からホテル散策に出向いていた。テレビはNHKが映るし、日本語も通じる環境は日本のようだ。NHKではおしんをやっていてベッドに横になりながら集中してみてしまった。面白いドラマであった。年をとったおしんがジェネレーションギャップに悩んでいた。



2月14日 
プーケットを取材していていつも目に飛び込んでくるものがある。それは外国人の男性とタイ人の女性がバイクの二人乗りでバーやレストランを徘徊しているシーンである。なぜか気になって仕方がなかった。取材対象をホテル撮影からプーケットアンダーグラウンドに切り替えてみるほうが面白いと感じた。タイ式マッサージを試した。気持ちよいのは確かであるが痛かった。取材しながら取材対象を試せるのは対取材ゆえだ。マッサージしかりホテル、食事と撮影が終わってしまえばそこに快楽があった。



2月15日 
取材最終日。自分のホテルの風呂は衝撃であった。部屋の中に風呂があるのは当然なのだが、バスタブにつかりながらリビングにあるテレビを見れるという環境であった。灼熱の気候にもかかわらず熱いお湯をバスタブにためて汗だくでフロ場から映画を見ていた。取材最終日は街中のショッピングポイントを回った。物価が安くて実用的なものが多い。私はカシューナッツを買った。お土産はそれだけであった。取材でやってきたプーケットであるがこの次はプライベートでやってきたい。



2月16日 
タイから帰ってきたばかりであるが3日後にはイラク取材に出発だ。2003年はほとんどイラク取材で時間をとられてしまった。今年も出だしからイラク取材が連続している。今回でイラク取材は10回目を向かえる。タイ取材があまりにも快適すぎたゆえにイラク取材の苛酷な環境に適応できるように準備に入る。カメラの調子が悪い。イラクではデジタルとフィルム、さらにムービーも回す。ガチャガチャとあっちこっちにぶつけながら走り回っているから、新品も4日ほどで壊れてしまう。



2月17日 
出版社、テレビ局、新聞社、ラジオ局、一つ一つに出向いて今回のイラク取材の主旨を伝えた。ひとつの営業活動だ。東京内を縦横無尽に一日中駆けずり回った。出発前に各メディアと連絡を取っておくことはイラクに入ってからその効果を発揮する。仕事の依頼もそうだが、みなそれぞれにイラクにいる私へ取材方法アドバイスをくれるのがうれしい。レールから脱線した取材を繰り広げる私を軌道修正してくれる。自分一人ではとても取材できないと感じている。