サマワ


戦後イラク情勢11月1日配信
このテキストは渡部の取材報告を元に板倉が書き起こしました。

イラク・自衛隊派遣アウトライン
自衛隊イラク派遣基本計画、特別国会で承認要求(11月2日各社報道)政府は1日、自衛隊派遣の基本計画を衆院選後に召集される特別国会に報告し、承認を得る方針を固めている。これで、自衛隊年内派遣準備が整った。先月16日にはイラク派遣計画の概要が固まっており、それによると12月上旬に先遣隊150人を派遣、来年1月上旬にもおよそ本隊が派遣される。陸上自衛隊は北海道旭川市の第2師団第2後方支援部隊が南部で給水、給電、医療支援等の人道支援を行う。派遣先はナシリヤ、サマワなどイラク南部の3都市から絞り込む予定。また航空自衛隊はカタールかクウェートの拠点から、イラク国内や周辺国との間で救援物資などの空輸を行う。 




自衛隊派遣予定地イラク南部の現状とは?


市民は自衛隊を歓迎する意外にも派遣予定地とされるナシリヤ・サマワでは自衛隊を歓迎する声が高まっている。渡部がインタビューを試みた(各地で20人に聞いた)6割から7割が支持する。その理由として挙げられるのが自衛隊が来ることで日本の技術を提供しているのではないかという期待感。水道、電力などのインフラ整備が完璧に行われるのではないかという言う期待だ。もう一点が日本が米軍に原爆を落とされ占領されたというイラクの人々と同じ経験をしているがゆえに、我々の気持ちを分かってくれるのではないかという期待もあるのだ。
一方反対する人たちの思惑は「国際支援」という名目の元、占領政策を行う米軍兵士らへの疑念がそのまま日本とダブるものだ。強権の元に行う治安維持はイラクの人々の目には「外から来た奴の強行」にしか写っていない。逆の言い方をするならば、自衛隊が治安維持ではなく、人道支援に完全に徹するのならば地元住民の支持、信頼を得るのは国内で論じられるほど困難ではないのかもしれない。そのサマワ、ナシリヤの現状だがバグダッドと比較すると電気、水道などは遥かに整備されており市民の不自由度は少ないといえる。また治安も比較的良く、夜間に町を出歩く市民の姿も見受けられる。ナジャフはシーア派の総本山でもあり、旧フセイン政権の天敵でもあった。フセイン政権に弾劾された地域であることから外国人部隊の駐留を解放軍的に捉えている人も多いようだ。

しかし全て安全というわけではなく、テロの恐れも多い。イラク全土で完全に安全だと言い切れる場所は皆無のはずだ。またシーア派の指導者はシーア派独自の政府を樹立することを発表しており、こうした動きがスンニ派、あるいはクルド人の反感を買っているために、国内での民族、宗派対立に基づくテロの標的になることも充分に予測される。


銃で自衛するナシリヤ市民
ナシリヤ市内では朝7時30分頃から闇市(ブラックマーケット)が開催される。売られているもの。それは武器だ。旧政権時代にロシアから供与を受けた武器が横流しされており、現在それを買いにくるのは市民だ。ニカロフ銃が1挺250ドル。その他にマシンガンや手りゅう弾等が売られている。弾丸は30発で2ドルから3ドルだ。市民が買い求める理由はただひとつ。「家族を守るためだ」と言う。


医療支援する韓国軍
ナシリヤ郊外のイマールアリ空港には米軍がベースキャンプを展開している。このキャンプの中に韓国軍が運営する緊急医療病棟「ジェマ・ホスピタル」がある。韓国軍はナシリヤ近郊で医療活動と医薬品、資材の輸送活動を展開している。ジェマ・ホスピタルは小規模ではあるが非常に効率的に運用されている。10人の医師と30から35名程度の医療スタッフが1日あたり40人の患者を診察する。緊急医療病棟と言うだけあり24時間の対応を行っている。ここで診察されるのは交通事故などの患者や急病などのいわゆる急患である。ベースキャンプの入り口まで来た患者は米軍による検査を受け、それが終わると病棟から来た救急車に載せられホスピタルまで搬送され、手当てを受ける。医師は韓国軍の軍医だ。こうした対応がナシリヤ住民に非常に感謝されていると言う。イギリス、イタリア、ルーマニア等の各国軍がナシリアに展開する中、韓国軍のこうした医療支援はダントツの支持を受けていると言える。韓国軍は完全武装をせず、最低限の武器を携行するに留め、あくまでも自分たちの軍が医療支援に来ていることを強調していることにも理由がある。しかし比較的安全とされるナシリヤではあるが危険であることには変わりはなく、韓国軍の命をかけた行動が市民の支持を得ると言う結果になっている。





この記事の電話リポート
(10月31日収録)
衛星回線の状況により一部聞き取り難い部分があります

イラク最新情勢
2分07秒/48kbps

国際赤十字爆破
1分54秒/48kbps

ナシリヤ駐留の韓国軍
4分43秒/48kbps

米軍キャンプ
3分39秒/48kbps

ブラックマーケット
3分48秒/48kbps

市民は自衛隊を歓迎する
4分06秒/48kbps

ナシリヤ・サマワ最新情勢
1分45秒/48kbps

米軍統治の行方
1分38秒/48kbps 


イラク国内で活動中のNGO,NPO
JVC日本ボランティアセンター
JEN

(11月1日 取材:渡部陽一 記事:板倉弘明)