フセイン予審


7月3日更新


連合軍暫定当局(CPA)は6月28日、突如として主権移譲を前倒しした。主権移譲をこの目で見たいとイラクに向かった渡部にも全く「寝耳に水」。翌29日には戒厳令が敷かれるとの情報もある中、無事にバグダッド入りを果たす。毎日の様に事件が伝えられるイラク。勿論気が抜けないのが大前提ではあるが、それでも渡部から我々への第一報は「4月の方が雰囲気は悪い」、と言うものだった。
現在の治安状況は?日本への市民感情は?政権移譲によりイラクはどこへ向かおうとしているのか?渾身のリポートを今回もお届けする。

■フセイン元大統領予審

「我々が忘れることはない」カリード(48)タクシードライバー


イラクメディアで予審を食い入るように見るイラク市民


フセイン元大統領の予審が始まった。かつての独裁政権も完全に崩壊したものの今だイラク市民にとって"サダムフセイン"という言葉は恐怖の象徴となっている。現地のメディアでも一面でフセイン予審を取り上げ、イラク市民は食い入るように目を通している。タクシー運転手のカリード・アハメッド氏(48)は「フセインの審議をイラク国内でやることは当然だ。フセインによってどれほどの市民が命を落としてきたか、我々が忘れることはない。公開審議になれば間違いなく法廷で罵声を浴びせてやるよ。」と語る。


市内は至って普段どおり。

バグダッド市内で警備にあたるアメリカ軍兵士

フセインの影が再びバグダッド市内に駆け巡るも、街中は混乱を極めた今年の4月に比べると不気味な静けさを保っている。突発的な米軍と武装勢力との衝突があるも、市内はいたって普段のバグダッドの風景である。マーケットでは買い物に明け暮れる人でごった返し、道はタクシーの渋滞ができるほどである。物価の上昇もなく1ドルが1480イラクディナール前後で取引されている。真夏を迎えつつあるイラクでは気温が40度を軽く超え、午後にもなれば市民は自宅に帰り昼寝をする日課となっている。武装勢力の動きがバグダッド郊外では活発化しており、イラク人でさえも市内から外への長距離移動は控えているのが現状である。

(日本時間7月2日午前0時 バグダッド発)