戦後イラク情勢〜002
<報告>渡部陽一
1973年静岡県生まれ。
学生時代より世界の紛争地を取材。
ルワンダ内戦、コンゴ紛争、ユーゴスラビア・
コソボ紛争、ソマリア内戦、パレスチナ内戦、
コロンビア内戦、チェチェン紛争、イラク戦争など世界情勢を取
材中。 戦後イラク情勢10月18日配信
このテキストは渡部の取材報告を元に板倉が書き起こしま
した。
イラク・10月18日電話報告アウトライン
私(板倉)がイラクを訪れた5月。
戦後の国境警備は米兵が行っていた。
そして今はイラク警察と米軍が共同で入国審査及び警備。
あくまでも警察が主体となり、米軍がバックアップしてい
る。
ボーダーからバグダッドは6時間。
ラマディ、ファルーシャ、では未だアリババ(盗賊)が出没し
ており
取材班はコンボイ(隊列)を組んでバグダッドへ入らなけれ
ば危険である。
市民生活
ガソリン1リットルは今80ディナール。以前は20ディナール
だった。
こうした中、特に入手しにくいもののひとつが健材である。
アメリカは爆撃された建物をコンクリートで覆うと言う作業を
進めているが
これに伴い米軍が大量のコンクリートを買い占めているた
め、お金があっても市民は買えないと言う。
多くの市民が自宅を修復できていない状況。
現在米兵14万人以上がイラク国内に滞在。
米兵の生活を維持するためにも生活物資を補給する必要
がある。
それに伴い生活物資が高騰している。
値段は上がっているものの、食料、オイル、石鹸等の生活
物資は豊富。
経済封鎖が解かれ一気に物が入っているようだ。
但し医薬品は少ない。
現在市民が薬品を入手するには処方箋が必要。
診察により、処方箋をもらわなければ市民は薬品を手に出
来ない。
こうした手続き上の煩わしさや、輸送コストの問題もあり医
薬品の絶対数不足は未だ解消されていない。(この背景は
取材中)
こうした中、
JVC日本ボランティアセンター、、
JEN等の日
本のNGOも活発に活動を開始している。
(JVC、JEN共イラクのみならずアフガンなど各国で活動
中。活動詳細はそれぞれのウエブサイトで公開されてい
る)
また個人的に草の根支援する人たちなども多い。
さらにバグダッド市内ではバックパッカーの姿が見られる様
になってきている。実際渡部の宿泊するホテルにも4人滞
在中。今のイラクの様子を目に焼き付けたいと言う。
日本のNGOは病院に対しての医薬品、医療器具の提供を
行う。
ホテルを拠点に病院や貧しいエリアを巡回し特に子供たち
を主体とした支援を展開している。現在個人でイラクを支援
したいと考えている方がいらっしゃるならば、こうした
NGO、NPO等へ託すのが現時点でもっとも確実な方法だ
ろう。
対立
イスラム教シーア派内部の対立が深刻だ。
イラク国内のシーア派は人口のおよそ60%に達する。
今年の4月には亡命先のイギリスから帰国したシーア派・
イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)指導者、アブド
ルマジド・アル・ホエイ師(41)が、故郷のイラク南部ナジ
ャフで武装集団に刺殺された事件があった。。
米英政府はフセイン政権崩壊後、シーア派を束ねる指導者
としてホエイ師に期待していた。一方でイランに亡命したシ
ーア派グループは反英米の立場であり殺されたホエイ師
は敵対視されていた。SCIRI側は対立するサドル派の犯
行だ、と語っている。
サドル派は米英統治政策に反対の立場をとっており、統治
評議会を認めていない。サドル派指導者のモクタダ・サド
ル師は独自の政権・軍隊創設を発表するなどしてシーア派
の人々の支持を集めている。
さらに目を北部に向けてみるとクルド人、トルクメン、アラブ
人の対立も深刻化しており、国内のパワーバランスが一気
に崩壊、国内治安の悪化は増すばかりだ。
GoBackAmarica!
GoHomeAmerica!
渡部が市民にインタビューするとこの声ばかりが帰ってく
る。
我々(板倉・久保田)が5月に取材した際には、少数ながら
米軍を支持する声も聞かれたが、今こうした声を市民から
聞くことは出来ない。
自衛隊問題
「イラクにとってはよくないこと、日本にとっても危険な賭け
だ!」
日本の自衛隊が入ることを市民は知らない。渡部が日本
からは自衛隊が派遣されると市民に告げると、人々から帰
ってきたのが上の答えだ。
ヨルダンやトルコはイラクに軍隊を派遣した。それによって
テロを呼んだ。
派遣によってテロの対象になることは間違いないだろう。
これが市民の予測である。
(10月18日 取材:渡部陽一 記事:板倉弘明)
この記事の
電話リポートはこちらです
(10月17日収録)
衛星回線の状況により一部聞き取り難い部分があります
イラク国内で活動中のNGO,NPO
JVC日本ボランティアセンター
JEN