パリ連続テロで難民の行方が注目されています。そもそも難民を生んだシリアやイラクは、どの程度「逃げなければいけない状態」なのでしょう。そしてIS(イスラム国)を始めとする憎しみの連鎖はどのように始まったのでしょうか。その問いに答えるだけの報道があまりに少ない中、この映画は答えを得る一助になりたいと思います。
主人公はフォトジャーナリスト・久保田弘信とその仲間たち。久保田カメラマンはアフガン戦争以前から難民を取材してきました。戦争の記録だけではなく、そこに生きる一般市民たちの生活を15年にわたって記録してきたドキュメンタリーとなっています。「正しい報道を伝えてきたのか?」自問自答しながら取材してきた私たち15年の記録をどうぞご覧ください。
私たちASIANEWSはフリージャーナリストが立ち上げた独立系の映像制作会社です。アフガン戦争以降、イラク戦争、シリア内戦を継続取材。テレビ番組や新聞・雑誌などを通じて報道してきました。
一方、これまでに3本の自社製作映画を制作し、メディアで「伝えきれなかったこと」を発信してきました。私たちが伝えきれなかったこととは何なのか?
それは数や規模といった「事象の報道」ではなく「そこに生きる人を伝える」ということです。
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アフガン難民取材で見えたもの
私たち最初の紛争地取材はパキスタンに流出したアフガン難民でした。到着早々に長老たちはこんな言葉を突きつけました。「お前たちは嘘つきだ」と。
「これまで沢山のメディアが取材し「支援を呼んでくる」と言ったのに誰一人戻ってはこない」
この言葉をきっかけに私たちは取材・帰国(支援物資調達)・取材を繰り返します。片手に毛布、もう一方の手にカメラ。自分たちのやっていることはジャーナリストとして相応しいのか?自問自答が続きます。
この映画の主人公であり案内役でもあるフォトジャーナリスト・久保田弘信は当時の日記に「僕たちジャーナリストはハイエナなのか」と綴っています。
フォトジャーナリスト:久保田弘信
大学卒業後インド大地震を取材。以来アジア・中東を舞台に取材を続ける。NYテロ以前からアフガン難民を継続取材。イラク戦争では空爆前から同国に潜入し空爆下のバグダッドから日本にリポートを送る。ASIANEWS取締役。日本写真家協会会員
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人と人がぶつかり合う修羅場で見えてきたもの
支援を始めても難民は配給の順番を守らず、さらなる物資を要求します。理不尽な要求に時として私たちが声を荒げることも。取材する側・される側双方とも「人が剥き出し」となる現場。しかしそんな過酷な場所でも子供たちは毎日遊び、貧しい人々が我々を食事でもてなしてくれます。
また長い時間をかけて関係を構築したことで、難民たちがどのような事情でアフガニスタンから逃れてきたのか、逃げてきた難民の間でも民族によって差別があること、など表面的な取材では見えてこない背景が浮かんできました。
アフガニスタン・クエッタ郊外の難民コミュニティで(撮影:久保田弘信/2002年)
絵になる現場、だから行くのではなく、弱い人々の生き様を記録し、継続して取材することで本質を明らかにする。そしてたくましく強く生きる人に出会うことで、私たちも生きる勇気を得るために。そんなことを考えながら久保田カメラマンと私たちは現場に向かいました。
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私たちの作る映像はいわゆる反戦映画ではありません。もちろん反戦や平和運動を否定するものではありませんが、この映画は私たちのオピニオンを伝えるのではなく、いま世界で何が起こっているのか、日本のジャーナリストの目線を通じて知っていただくことを目的に製作します。
映画を通じて考えていただきたいのは「幸せ」ということです。それは他人の「不幸」を見て「幸せ」を感じるということではありません。極限の地で生きる人々の弱さと強さを見ていただき、幸せとは何なのかを考えていただきたいのです。