「最前線のマッサージチェア」
滑走路脇の誘導路を自衛隊の車両で移動する。やがて滑走路の端が見えてくるとそのすぐ脇に緑色の格納庫が見えてくる。 ここがアラート・ハンガーと呼ばれる緊急発進機の待機場所。常にファントム2機と搭乗員、整備士が24時間体制で待機している。
パイロットたちが待機する部屋を覘く。幾つかのソファに混じってマッサージチェアが見える。 実はこのマッサージチェア。航空自衛隊の戦闘機部隊で必ずといってよいほど目にする。 何と贅沢な、と思うかもしれないが決して贅沢品ではなく必需品なのだ。 音速を超える機動力で飛行する戦闘機は急激な上昇降下、あるいは急旋回をする度に「G」と呼ばれる重力が掛かる。 時に体重の6倍から7倍と言うが、分かりやすく言うと私たちの両肩に300キロの重さが掛かると思えばよい。 この重さが旋回の都度掛かるパイロットたちの職業病。それが極度の肩凝りだ。
こうした調度品にパイロットの任務を垣間見る。 我々はここでデモ・スクランブルと呼ばれる緊急発進の訓練を見せてもらうことになっていた。 取材前年のスクランブル実績は24回。月に2回のペースと考えると実際のスクランブルを収録することは困難だ。 そこでデモ・スクランブルを取材することになったのだ。
(続く)
(記事:板倉弘明)
<参考サイト>
航空自衛隊オフィシャルサイト